【コラム】宮本輝『優駿』はどんな作品?
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宮本輝『優駿』
一頭のサラブレッドに人生を重ねた人たちの物語
競馬小説の名作として必ず名前が挙がる、宮本輝の『優駿』。一頭の馬がダービーを目指す話でありながら、読み終わると心に残るのは馬に関わった人たちの顔です。
どんな作品なのかを、ネタバレなしで紹介します。
作品の基本情報
| 項目 | 内容 |
| 作品 | 優駿(ゆうしゅん) |
| 作者 | 宮本輝 |
| ジャンル | 長編小説(新潮文庫は上下巻) |
| 受賞 | 吉川英治文学賞、第1回のJRA賞馬事文化賞 |
| 映像化 | 映画『優駿 ORACION』(1988年、杉田成道監督) |
どんな作品?
北海道の小さな牧場で生まれた一頭のサラブレッドと、その馬に人生を重ねていく人たちを描いた長編小説です。馬の名前はオラシオン。
スペイン語で「祈り」という意味です。
競馬小説というと、レースの勝ち負けが中心の話を想像するかもしれません。でも『優駿』の中心にいるのは人間です。
牧場を守りたい生産者、会社の行方に追い詰められていく馬主、その娘、馬に乗る騎手。それぞれが自分の事情を抱えたまま、一頭の馬に何かを託していきます。
競馬を題材にした作品として初めてJRA賞馬事文化賞を受けたことからも分かるように、競馬の世界の奥行きを、文学として正面から描いた一冊です。
あらすじ(序盤だけ)
北海道の日高にある小さな牧場で、一頭の仔馬が生まれます。牧場主の息子は、この馬に特別なものを感じ、大切に育てていきます。
やがて馬は、会社を経営する馬主の手に渡り、オラシオンと名付けられます。牧場の親子、馬主の一家、その周りの人たち。
立場も考え方も違う人たちの思いを背負って、オラシオンは競走馬としての道を歩き始めます。
見どころ
■ 馬に関わる人たちの「業」
この作品の読みどころは、馬そのものより、馬に関わる人たちの欲や嫉妬、裏切り、そして祈りです。お金のために馬を持つ人もいれば、自分の人生の答えを馬に求める人もいます。
きれいごとだけでは済まない競馬の世界が、そのまま描かれています。
■ 牧場から競馬場までの長い道のり
生まれた仔馬が競走馬になり、レースに出るまでには、生産者、馬主、調教師、厩務員、騎手と、たくさんの人の手がかかります。『優駿』を読むと、ふだん競馬場で見ている一頭の後ろに、どれだけの人生があるのかが分かります。
■ 最後のレースまで積み上げる構成
上下巻をかけて、人と馬の物語を少しずつ積み上げていきます。だからこそ、クライマックスのレースの場面には、ほかの競馬小説では味わえない重みがあります。
結末はぜひ自分の目で確かめてください。
映画『優駿 ORACION』
1988年に『優駿 ORACION』として映画になりました。監督は杉田成道です。
ちょうど日本が競馬ブームに入っていく時期の作品で、小説とあわせて、当時の競馬の空気を知る手がかりにもなります。
競馬ファン目線の楽しみ方
- いまの競馬を知っている人ほど、生産者と馬主の関係や、一頭にかかるお金と時間のリアルさに驚くはずです
- 日高の小さな牧場から大レースを目指す話は、現実の競馬でも何度も語られてきた夢です。好きな馬の生まれた牧場を思い浮かべながら読むと面白いです
- 1980年代に書かれた作品なので、いまの競馬との違いを探しながら読むのも楽しみ方の一つです
こんな人におすすめ
- レースの予想だけでなく、競馬の裏側にいる人たちに興味がある人
- 人間ドラマのしっかりした長編小説を読みたい人
- 『ザ・ロイヤルファミリー』のような馬主や牧場の話が好きな人